インド数学に踊らされるな
このワタクシ、数学とは12歳のときに完全に縁を切った。
いや、縁を切ったというよりは、中学生になって算数が数学と名を変えた瞬間に、継続して付き合うのを止めたという方が正しい。
なお、算数と呼ばれている間は、小学校の主要4教科の中では最も得意なのが算数であった。
それが、数学と名を変えた瞬間に全く理解できなくなったのである。
ちょうど小学校のときに好きだった女の子が中学生になって少し大人の雰囲気になったから近付き難くなった感じと言ったほうが判りやすいかもしれない。(よけい判りにくいか)
それ以来約30年、数字はできるだけ遠ざけてきた。
常にこのワタクシの懐具合が寂しいのも、このワタクシの数字嫌いと関係があるような気がしてならない。
昨今、巷では「インドの数学」というもので盛り上がっているようだ。
本屋さんに行くとかなりの量の「インド数学」本が置いてある。
このワタクシが手に取ることはまずないが、表紙から類推する限り、インドの数学教育においては、掛け算は「9X9」までではなく「99X99」まで暗記させているので我々も覚えようとか、二桁以上の掛け算を簡単にする技を伝授してあげようというような本なのだろう。
今インドを訪れているこのワタクシは、どちらかというと理系出身者の集まりであるソフトウェア会社のプログラマー数人と昼飯を食っていた。
カレーを食いながら、「インド数学」の凄さについて聞いてみた。
彼らは一様に、「インドの数学教育はスゴイ」と誇っている。そらそうだろう、日本ではあれだけの数の本になるのだから。
そこで、彼らに問題を出してみることにした。
「15X15は?」
「・・・・・・」
誰も答えない、、、というか必死に頭の中で計算しているようだ。
「答は225だろう」とこのワタクシが言うと、「計算が速いな~」なんて言っている。
「△5X△5」の計算なんて、「△X(△+1)」が三(&四)桁目になって、残り二桁は「25」であることくらい算数しか勉強していないこのワタクシでも知っている。(なぜそうなるのかは知らん)
「それでは、12X14は?」
「・・・・・・」
誰も答えない、、、というか必死に頭の中で計算しているようだ。
「答は、168だろう」とこのワタクシが言うと、「計算が速いな~」なんて言っている。
このワタクシはまったく計算していない。単に暗記しているだけである。よって、これ以外の二桁の掛け算の答は彼らと同じように計算しないと判らない。
そこで、自分でも簡単に答が出せない2桁の掛け算を適当に言ってみた。
「48X76は?」
「・・・・・・」
このワタクシも必死に暗算した。
「3648だろう」とこのワタクシが言うと、「計算が速いな~」なんて言っている。
おいおい、このワタクシの掛け算の能力なんて、日本人の中でも間違いなく5千万位以下だぞ。。。
そして、彼らと話しているうちにあることが判ってきた。
彼ら曰く、確かに日本でいう小学校くらいのときに、色々なことを暗記させられるのだが、当然年を取ると忘れてしまうというのである。
おまけに世界中のどこに行っても、大人が計算するときは電卓かパソコンである。頭で計算するなんてことは趣味以外ではありえないだろう。
これを日本の教育に置き換えると、我々は何千もの漢字を覚えさせられるが、今では簡単な漢字ですら忘れる有様である。我々はどれだけの英単語を覚えさせられたのだろうか?
インド数学の何たるか知らないこのワタクシが言うのもおこがましいが、いくらインドの数学教育の体系がすごくても、それを人生で本当に活用するかどうかは、一人一人の興味の問題である。
そして、インド数学なんて知らなくても日本人で数学を得意としてきた人々は、簡単にインド数学の意味することを解説してしまうだろう。
日本人の中でも数学に関してはかなりアホであるこのワタクシに勝てないインド数学がブームになっている。。。
そして、それで儲けているヤツらがいる。
見習わないとならないのは、インド数学ではなく、それで儲けているヤツらのビジネスセンスの方かもしれない。