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離婚宣言

 このワタクシの家から六本木、広尾、神谷町方面に行くときは、三田線で日比谷まで行って日比谷線に乗り換えることが多い。大江戸線に乗ると乗換えなしで行けるが、都内を地下で半周以上しないといけない。。。(なお、三田線に乗るときは運転手を監視しておかなければならない)

 今日所用があって神谷町に行った。
 上記の通り、日比谷駅で乗り換えたのだが、三田線から日比谷線への連絡通路を歩いているときに不思議な光景を見た。
 
 三田線の改札を出ると、日比谷線と千代田線に繋がっている地下通路があるのだが、日比谷線に乗るためには、最初の分岐点で左に直角に曲がり、5メートルほどで今度は右に直角に曲がる。この5メートルがクセモノで、二回目に直角に右折するときに、必ず日比谷線側から歩いてくる人と正面衝突しそうになる。
 勝手な理論だが、道路というものは、長ければ長いほど歩く人の流れに法則ができるものだと思う。要するに日比谷線側から歩いてくる人は、改札を出たあとの30メートルほどを左側通行で歩いてくるのである。(なぜ左側なのかは分からない)
 一方、三田線側からは、その僅か5メートルしかない通路で流れの法則ができないまま、バラバラと右折点に進入するので、右側にいる人や左側にいる人が存在する。
 当然、壁に囲まれた地下通路なので、向こうからくる人はどっち側を歩いているか分からない。右側を歩いていて曲がろうとしたら、左側を歩いてくる人に激突してしまうのである。(地下通路を管理している人の名誉のために言っておくが、いちおう、誰も見ないであろう角度のところにカーブミラーが付いている。しかし、5メートルの間にそれを発見するの難しい上に、発見したとしても激突を避けるほどの時間の余裕はない。始めから地面に線を引いてでも、激突しないように誘導するべきである)

 ここまで書いているこのワタクシは、当然右側を歩いて日比谷線の方に向かえば、向こうからくる人と激突することは分かっているのだが、常に思索に耽っているため(ボーっとしているとも言う)、そんなことをいちいち考えて歩いてはいない。
 そして、激突した。なんかちょっと怖そうなおにいさんである。。。
 「すいません」と振り返った瞬間に、次に来たおばあさんと激突した。おばあさんヨロケル。(ダンプカーとミニが激突したようなもんである。。。)
 体制を崩したおばあさんに手を貸し、「大丈夫ですか」と声を掛けたその瞬間、さっきの怖そうなおにいさんが振り向きざま、いきなり「ボクは離婚するんだからね。分かった?」とこのワタクシに大声を掛けてきた。
 一体どうなっているんだ。
 このワタクシを挟んで反対側に立っているおばあさん(怖いお兄さんの側からはまったく見えないと思われる)が、「はい、はい、、、」と答えた。

 ここからはこのワタクシの推測であるが、多分このボンボンは結婚した相手と折り合いがつかず、上京してきたお母さんにもそのことを悟られ、二人で東京見物をしながらこの問題について話していたと思う。
 そして、たまたま日比谷駅に着いたときに話が佳境に入り、いよいよ「離婚」するということをお母さんに話そうとしたその瞬間にこのワタクシと激突した。
 当然激突された怒りで声のトーンが上がりかけたときに、本来は「気を付けぇー」の一言を出すつもりが、話の流れの方の「離婚する」を出してしまったのではないかと思われる。

 他の人々は、あまりの大声とその言葉の内容に唖然としている。いまや彼の離婚は日比谷地下道では有名になってしまった。
 さらに彼らを唖然とさせたことは、現場が、このワタクシがお年寄の手を引く好青年(?)で、彼は因縁を付ける悪党にもかかわらず発した言葉が「ボクは離婚するんだからね」という意味不明の言葉である、という光景になっていたことである。

 それにしても、あれだけ大声で「離婚宣言」しなくても。。。





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