在仏日本大使館の抗議も理解はできるが、、、
フランスのメディアが、日本で軍国主義が復活しているかのような印象を与える構成の記事を書いたことで、在仏日本大使館が抗議をしているとのことである。
これに限らず、日本について間違った印象を与えるようなことは、どの国においても厳重に抗議してもらいたいものである。
いずれにしても、内容を検討をしないことにはぼやくこともできないので、ネット上のリベラシオンの記事をあたってみた。(さすがに、フランス5のテレビは今更手に入らない)
確かに、8月16日付けの紙面には、日本の記事の占める割合は非常に多い。他の日にはほとんど日本に関する記事がないだけに、妙に目立っている。
そこで、なぜか考えてみた。
過去において、このワタクシは8月15日を海外で過ごしたことが多い。しかし、この日は最も海外で過ごしたくない日である。
8月15日は、日米の戦争が終わった日であると同時に、第二次世界大戦の終わった日である。つまり、世界中で終戦記念日を祝っているわけである。
日本では、アメリカから痛めつけられた戦争が終わった日という印象が強いが、一般的に外国では、日独伊が始めた戦争が終わった日という印象が強い。たぶん、このイメージは、第三次世界大戦が始まって日本が勝利側に回らない限り消えないであろう。つまり、現実的には、永遠に戦争責任国・日本という印象は消えない。日本人がいくら忘れても外国では消えない。
日本のマスコミもそうだが、何かの記念日になると、無理やりひねり出してきたニュースをここぞとばかりに流しまくる。同じことが海外でも起こるわけである。テレビをつけると、真珠湾攻撃の映像や特攻隊の映像が繰り返し流される。多分、世界中どこに行っても同じであろう。
同様に、8月16日のリベラシオンの紙面でも日本の記事が増えたのであろう。
欧州の(ドイツを除く)たいていの国では、ドイツが降伏した日は祭日である。その時期になると、普段温和な人間でも、「今日はドイツをバカにする日だ」なんて言っているくらいなので、戦争の話題が絡むと誰もが愛国心丸出しになるのは仕方がない。
日清戦争、日露戦争直後の日本人の行動を考えればよく判る話である。
ましてや、フランスは、日本と同盟を組んでいたドイツに徹底的に破壊された国である。中国や朝鮮半島と同様に、「日本の軍事力」という言葉は脅威であるに違いない。いや、実は、世界の全ての国において「日本の軍事力」は脅威であろう。
日本がいくらイラクに自衛隊を送ったつもりでいても、世界中は軍隊を送ったような気分になっている。各国の良識のあるマスコミが、自衛隊と報道しても、テレビや写真で武装した日本人が映されたら「自衛隊=軍隊」と見えても仕方がない。このワタクシなんて、香港空港でライフルを持って歩いている警官ですら軍人に見えてしまうくらいである。
日本で単なる改憲論議を行っているつもりでも、外国では「日本軍国化論議」と報道されることも仕方のないことである。同じように、若干違う角度から見た報道を日本でも外国については行っているのだから。
さて、リベラシオンの記事だが、特に日本で軍国主義が台頭しているようには読めない(無理やり読めば別だが)。
どちらかといえば、日本のマスコミの、最初から結論ありきの記事よりは、より事実に即しているような印象である。小泉首相が靖国神社に行ったのも事実だし、その結果、国論を割っているのも事実であり、歴史見直し論が盛んなのも事実である。それが記載されるとまずいのであれば、嘘を書けと言うか、靖国神社に行くのを止めるしかないであろう。
そして、それ以前に、日本の国家としての戦争観なり軍事観を世界に訴える必要もあるはずである。60年経っているのに自分たちが起こした戦争の善悪を朝まで生討論している場合ではない。ましてや、総理大臣がプレスリーの家で踊ったり、らくだに乗っているような場合ではない。(参照:「エルビスからラクダまで。。。」)
もちろん、在仏大使館員のフランス語力の方がこのワタクシのフランス語力よりはあると思うので、我が国の印象を貶めるようところはドンドン指摘してもらいたい。
それよりも問題は、以下の日本語の記事の方で、これを読めば大抵の人は、「フランス、ふざけやがって」となるのは間違いない。今の中国に関する報道や韓国に関する報道もよく似たものである。その国全部が「反日感情」を持っている気にさせるようにワザワザ操作しているとしか思えない。ソウルや北京の街のど真ん中で、「あなたは日本を好きですか」と聞いたら半分以上は「好きだ」と答えるような状況が現実的にあるにも関わらず、報道だけで判断すると、韓国人や中国人は全て「日本が嫌いだ」と感じざるを得ない。
いや、仮に全員が日本を嫌っていても(嫌っているなら)、どうすればより仲良くなれるかを考えて報道するべきではないのか。
マスコミの言う社会正義というのは、憎しみを助長するということなのか。
フランスという国、そして世界観をきちんと理解していれば、このような報道にはならないはずである。
人間たるもの、自分の知っている分野であれば嘘を見抜くことはできるが、知らない分野であれば報道を信じてしまうという動物である。ましてや外国の話となると、ほとんど無条件で信じてしまうケースが多い。
ちなみに、日本大使館がフランス5に抗議したことも、リベラシオンでは記事になっている。
そして、多分来年の8月15日まで日本のことはほとんど報道されないであろう(日本としての意見を世界に訴えないのだから)。
(関連カテゴリー)
「報道をぼやく アーカイブ」
(引用)
イザ!:仏メディアが誤った日本報道 大使館が抗議-世界からニュース
在仏日本大使館はこのほど、18日放映のフランスの国営教育テレビ・フランス5のドキュメンタリー番組「過去の影」や16日発行で「レビジョニスト(歴史見直し論者)による挑発」などと報じた左派系紙リベラシオンに対し、「事実誤認がある」として抗議していたことが23日分かった。
フランス5がホームページ上で紹介した同番組の内容によると、番組では日中間の排他的経済水域(EEZ)の境界線画定問題や小泉純一郎首相の靖国神社参拝問題などを取り上げ、日本で軍国主義が復活しているかのような印象を与える構成になっている。
日本大使館ではこれらの問題の事実誤認を指摘した文書を送ったほか、番組担当者と事前に協議したという。
リベラシオンは16日付の1面トップで首相の靖国神社への参拝写真と「歴史見直し主義者の挑発」との見出しを掲載したほか、2面から4面まで参拝反対の哲学者、加藤周一氏との会見記事を掲載するなど大特集を組んだ。同紙は18日付でも作家のミカエル・プラザン氏による「歴史の見直しに流れる日本」と題する寄稿文を掲載し、「過去に関する虚偽を増殖させている」と主張。
日本大使館は同紙編集局長宛に抗議文を送ったが、「局長は夏休み中」(同紙)ということで23日現在、返答はない。
(引用終)