先進国の首都の「国際」空港(2)
今日、このワタクシは、北京に向かうべく成田国際空港に向かっていた。
(この文章は北京に向かう機内で書き始めている)
成田空港には一年間に数十回は行くのでいつもの道程なのだが、今日はちょっと事情が違った。
東関東自動車道の下りが事故で大渋滞である。幕張の時点で「新空港まで100分」と表示されている。
仕方なく、京葉道路から東金道路に出て、太平洋側(つまり空港の裏側)から空港にアクセスしてなんとか事無きを得た。
、、、というのは、今日のボヤキと何の関係もない。
空港に到着したときには、既に出発時刻の1時間前を切っていた。
おまけにこのワタクシは、肋骨の一本を骨折している。(参照:「ポッキリ。。。」)
よって、できるだけターミナルビルに近いところに車を駐車しようと空港の駐車場内をグルグルと回っていた。
なんとか、空いているスペースに車をぶち込み、ターミナルビルに急いだ。
ターミナルビルに近付くと、怒声が聞こえてきた。
何を言っているのかはよく判らないのだが、どうやら喧嘩のようである。
先を急いでいるので相手にはしておれないのだが、(このワタクシにとっては)不幸にして、この喧嘩はターミナルビルに渡る地下道に降りるためのエスカレーターの前で行われていた。
「あおのり世相をぼやく」の愛読者の皆さん(なんているのか?)ならよくご存知の通り、このワタクシ、典型的な江戸っ子なので(どこがやねん)、火事と喧嘩には必ず顔を出すという変な性格の持ち主である。
急がなくてはならないことは判ってはいるものの、とりあえず喧嘩の原因を探ってみようと一瞬だけ立ち止まることにした。
通常、空港などの公共機関では、最も便利なところに「障害者用駐車スペース」がある。
喧嘩の主の一人は、そのスペースに車を止めていてその車の横に立って何かを叫んでいる(以下、「駐」と表記)。車の前面には障害者(介護者)用の「駐車禁止除外ステッカー」が付いている。
もう一人は、その車の駐車スペースの真ん前にある売店の前から叫んでいる(以下、「売」と表記)。
彼らがもう少し近付けば叫ぶこともないとは思うのだが。
売:「文句があるなら掛かってこいよ」
駐:「お前には用はない。黙っておれっ」
売:「掛かってこれないのか、腰抜けが。。。」
駐:「何を~」
と言って、足を引きずりながら前に出た。
売:「掛かってきたら、傷害罪で訴えてやる」
おいおい、「掛かってこい」と言ったのは、アンタでんがな。
、、、と、このワタクシが突っ込みを入れる間もなく、足を引きずった男性は、売店の前のオッサンの胸ぐらを掴もうとした。
売店の前のオッサンは、恐怖の色を顔に浮かべ思わず体をのけ反らせた。
どうやら足を引きずった男性も本気で殴る気はなかったようで、見事なまでに、売店の前のオッサンの胸の前で手を止めた。(これは、下手なドラマの喧嘩シーンより迫力があった)
売:「なんだ、できね~のかよ」
駐:「バカは相手にできない」
売:「だいたい、そんな元気な障害者がいるのかよ~。障害者なら障害者らしくおとなしくしてろ、バーカ」
その瞬間、今度はこのワタクシが切れた。
というか、これで切れないヤツは人間ではないだろう。
このワタクシは、肋骨を折っていることを忘れて一歩前に出た瞬間、背中に激痛が走ってその場に立ち尽くしてしまった。
、、、というような事に気付いた人は誰もいないとは思うのだが、とりあえず、足を引きずった男性は、「相手にしてられない」と呟いて、車の方に戻った。
そこに、騒ぎを聞きつけた先進国の首都の「国際」空港の駐車場の責任者(以下、「責」と表記)がやってきた。
責:「どうされましたか?」
駐:「義足なのでこのスペースに駐車しようとしたのです」
どうりで足を引きずっておられた訳だ。
「駐車スペースにコーン(三角柱)が置いてあったので、一度車を降りてどかせてから駐車したのですが、私の場合はなんとかできますが、車椅子の方にとっては不便ではないでしょうか」
「、、、と、こちらにいらっしゃる係の方にお聞きしようとしたら、あちらの私服の方がいきなり、言いがかりをつけてきたのです」
「障害者なら『車椅子マーク』くらい付けて車を走らせろ、だとか、障害者なら障害者らしくおとなしくしてろっ、だとか。。。」
後半の部分はこのワタクシも耳にした。
前半の「車椅子マーク」の部分だが、これは義足の人で車椅子に乗っていなくてもマークを付けろ、と言うことなのか。そんなことはこのオッサンが勝手に決めなくてもよい。
責:「それは大変ご迷惑をおかけしました」
駐:「いえ、少なくとも、駐車場としては、私に迷惑を掛けてはいません。それにしても、あの人は誰なのですか」
責:「こちらの売店の社長さんで、時々障害者でもない人がこのスペースに止めるのを注意してくれるありがたい方です」
駐:「そうですか」
足を引きずった男性はさらに何かを言おうとしたものの、言葉を飲み込んだようであった。
なんとなく、この男性が言いたかった事が分るような気がする。
このワタクシが同じ立場なら、「どこがありがたいのだ、障害者に暴言を吐くような男が。。。」と怒鳴っていたことは間違いないであろう。
結局、その男性は、よほど売店の真ん前に車を止めるのが嫌になったのか、車を再び動かし、別の場所に駐車していた。つまり、自分の不都合も省みず、ターミナルビルから遠くへ去っていったのである。
男性が去ったあと、怒りのおさまらないこのワタクシは、しばらくその場で売店のオッサンと駐車場の責任者の会話を聞いていた。
売:「ああいうヤツが多くて困まりますよ」
責:「社長さん、本当にいつもすいません。。。」
駐車場の責任者がどういう神経でこの言葉を発したのか分らないが、これが先進国の首都の国際空港の実態である。
たまたまここに売店を開いた人がこのような人だから仕方なく応対してるような気もしないでもないので、一概に責める気はない。
しかし、空港公団として、このような人物に売店営業を許可させているのは甚だ問題であると言わざるをえない。
もっとも、一方的に誰かを責めるのは嫌なので、この売店の社長の立場に立って物事を考えると、、、多分障害者でもなくこのスペースに車を止める人は多いのであろう。
現実的に、羽田や成田の第二ターミナルと比べて、今日利用した成田の第一ターミナルの障害者用スペースは、見事なまでに(というか、当たり前なのだが)、違法駐車(実際には「違法」ではないのだろうが、適当な言葉が浮かばないので敢えて「違法」とさせていただく)が少ない。
それには、この売店のオッサンの貢献度も大きいのかもしれない。
しかし、このオッサンには、違法駐車を取り締まる権限はないのである。
空港の駐車場(会社)がちゃんと管理していれば良いだけの話であり、たまたまその場所に店を開いたオッサンが、偉そうにする必要はまったくない。おまけに、駐車場関係者がペコペコする必要はない。
仮に、そこまでは許すとして、あの暴言は一体なんなのだ?
全ての暴言をこの文章には書いてはいないが、目の前にいるのが弱者(この場合は、明らかに障害者)と分っていながら(いや、仮に判っていなくても)、「掛かってこいよ」とか、「障害者はおとなしくしてろ、バーカ」などと言い放つのは、そもそも道徳的におかしい気がしてならない。いや、明らかにおかしい。
そして、これからも成田空港の第一ターミナルの身体障害者用駐車スペースの前には、このオッサンがいて、いつ暴言を吐くのかは分らないのである。。。
この「あおのり世相をぼやく」では、できるだけ冷静に文章を書くことを心がけてきたつもりである。
そして、ある出来事に対して、一応は自分で表側の立場にも裏側の立場にも立ってみて、一方的な見解はできるだけ避けるようにしてきたつもりである。どんな意見(人間)にも、その意見(人間)を形作った経験や背景があると思うので、自分の勝手な判断基準で、どこかの朝の番組のように、一概にズバリとは否定しないつもりではいる。
しかし、今日の売店のオッサンの態度は、言い訳すら聞きたくはない。
このワタクシの拙い文章では臨場感が伝わらないとは思うが、そのときのこのオッサンの態度や顔付きたるや、およそ血の通った人間とは思えないものであった。
それこそ、風評を広げて、店をつぶしてやりたいくらいである。(それほどのヒット数が、このブログにないことが残念である。皆さん、知り合いに転送してください。。。)
と、偉そうに書いた瞬間に、どうも自分の意見の方がおかしくてこっちが笑われている気がしてきた小市民である、このワタクシは。。。
(「先進国の首都の空港」関連)
「首都の空港シリーズ アーカイブ」
(「障害者用駐車スペース」関連)
「東横イン事件に思う」
「東横イン事件に思う(2)」
コメント (2)
あおのりさん、はじめまして。
あおのりさんのコラム、いつも楽しみに見せていただいている者です。
あまりに許せなくて、初めてコメントしています。年に一度の里帰りでしか利用しない空港ですが、この売店での不買運動に参加したいくらいです!
空港の管理者にこのお話しを読んでもらいたいです。
でも、こういう人であると空港の人も知ってるのかもしれませんね。評判の悪い人なのかもしれません。人の道を外れていても、法律に触れてない限り罰せられることがない。それが民主主義というものなのでしょう。
投稿者: ぬぬ | 2006年12月29日 04:51
日時: 2006年12月29日 04:51
あおのり様、いつも楽しみにしています。世界空港同好会、会員番号-1 1) ベン・グリオン、アタチュルク等空港は人名で修飾するに限る、 2)中国の空港はなぜ2文字で必ず修飾するのか 3)SVOはなぜあんなにボロイのかを気にするものです。(個人が特定されそうな気がしますが)
さて投稿の件、お怒りごもっともですね。私も読んでいて腹が立ったのですが、1つの可能性として、別のストーリーがあったのか気になりました。
あまりこんなの事は考えたくは無いですが、disabledであるフリをして駐車場を確保する輩も多いと聞きました。(昨今日本では駐車難だそうですね) 今回は実際にご覧になられているのでそうではないかと思いますが、少し気になりましたのでコメントします。
また帰国したら是非お会いしましょう。
投稿者: 元 | 2007年01月11日 12:26
日時: 2007年01月11日 12:26